遺産分割協議の注意点
遺産分割協議、および遺産分割協議書を作成する場合、いくつか注意しなければならない点があります。
遺産分割協議の注意点
■必ず相続人全員で行う
※必ずしも、一堂に会して話し合う必要はなく、全員が合意している内容の協議書を、郵送などの持ち回りで署名・押印する、という形をとっても良いです。
■「誰が」「どの財産を」「どれだけ取得するか」を明確に記載する。
■後日発見された遺産(借金が出てくる場合もある)を、どのように分配するか決めておく(記載漏れがあっても、改めて協議書を作成しなくて済むため)。
■不動産の表示は、所在地や面積など、登記簿の通りに記載する。
■預貯金などは、銀行名、支店名、預金の種類、口座番号なども細かく記載する。
■住所・氏名は、住民票、印鑑証明書通りに記載する。
■実印で押印し、印鑑証明書を添付する。
■協議書が複数ページにわたる場合は契印をする。
■協議書の部数は、相続人の人数分、及び金融機関等への提出数分を作成する。
■相続人が未成年の場合は、法定代理人(通常は親権者)が遺産分割協議に参加するか、未成年者が成年に達するのを待ってから遺産分割協議をする。
■法定代理人も相続人である場合は、互いに利益が対立することになるため、家庭裁判所に特別代理人の選任申立を行う(未成年者である相続人が複数いる場合は、それぞれ別の特別代理人が必要)。
■相続人に胎児がいる場合は、胎児が生まれてから作成する。
■相続人の一人が分割前に推定相続分の譲渡をした場合は、遺産分割協議にはその譲り受けた者を必ず参加させなければならない。
遺産分割協議の方法や遺産分割協議書の作り方を誤ると、やり直しになってしまうことがあります。不安な方は当事務所へお問い合わせください。
『配偶者居住権の新設』 (令和2年4月1日施行)
今までは、遺産分割協議により配偶者が被相続人といっしょに住んでいた不動産(居住用土地建物)を相続した場合、金融資産を取得する割合が少なくなる場合が多くありました。したがって、老後の資金に不安を感じることとなるので、これを解消するため「配偶者居住権」を新設したのです。配偶者は居住用土地建物の所有権を取得するのではなく、居住権(期間は亡くなるまで、または10年等)を取得するので、評価額も所有権に比べれば安くなります。
たとえば、相続財産を居住用土地建物4,000万円と預金4,000万円、相続人を配偶者と長男とします。今までは、法定相続分2分の1ずつで考えると、配偶者が自宅に住み続けたいならば配偶者が4,000万円の居住用土地建物を、長男が預金4,000万円を相続することになりました。これが配偶者居住権(評価額2,000万円)を利用した場合、配偶者は2,000万円の居住権と預金2,000万円、長男は配偶者が居住している土地建物の所有権(評価額2,000万円)と預金2,000万円を取得することとなり、配偶者にとっては住み慣れた自宅に亡くなるまで住むことができ、且つ預金2,000万円を老後の資金に充てることができるようになりました。長男にとっても預金2,000万円の他に配偶者が亡くなった後は完全な所有権を取得でき、売却やその他の利用ができるようになりました。